なぜ100円一点なのか? 中編
前回、こんなことを書きました。
――JRAが2割を引いていく時点で、的中者が分け合うのは残りの8割に過ぎない。
だから初心者が馬券を買い続けたら、おそらくは自動的に回収率が8割に収束していくようにできているであろう――と。
私は頭に「超」のつく文系で、統計学に詳しいわけではありませんし、精密なデータを採取したわけでもありません。が、そんな私でも、なんとなく想像することはできます。
競馬の回収率というのは、続ければ続けるほど、8割に収束していく。
本当に、分のない賭けなのです。
では、どうすれば勝つことができるのだろうか。
私の答えは、
「賭けないこと」
でした。
賭け続ける時間をx軸、回収率をy軸とした場合、x軸が右に行けば行くほど、回収率を表す折れ線グラフは8割の周辺で高止まりしていくはず。
だったら、x軸の進行を可能な限り遅らせ、y軸がイレギュラーで爆発的に上昇するタイミングを狙いすまして撃ち抜き、あとはx軸の「牛歩作戦」で年間収支勝ち越しを決め込めばいい。
幸い、完全な運に頼るしかない宝くじなどと違って、競馬は自分の頭で予想できるゲームです。
18頭立ての場合、三連複の買い目は、
18×17×16÷6=816
なので、816通り。
単純な的中率を求めてみると、
1÷816×100=0.1225……
と、わずか0.12%。
競馬ならば、自分の予想いかんで0.12%の壁を打ち破ることができる。
統計学についてはまったくの不勉強ですが、私は勝ち馬を予想するという行為を「確率偏差をつける」と勝手に造語で呼んでいます。
実際、4万馬券から1・2・3番人気の堅い決着まで、私は今年、都合6度の三連複を当てています。
わずか1%に満たない奇跡を6度も。
我ながら信じられない快挙だと思います。
しかし、そのうち馬券を買っていたのは、たったの2度だけ。
残りの4回は予想だけして買っておらず、レースを見て悔しい想いをしています。
100円一本勝負が難しいのは、この、買っていない予想が的中して喜んでいいんだか悔しがっていいんだか、よく分からなくなるところかもしれません。
「次こそは」
と安易に財布の紐を緩めずに、踏みとどまっていられるか。
自分の予想力が上がったことを素直に喜び、週1~2回と決めたレースで仕留められる自信を深められるか。
じつは本当の大勝負は、その点にあるように思います。
つづく