競馬小説の最前線は、間違いなくこの人
読書好きの人以外にとっては、
「なんじゃそりゃ」
というニュースかもしれませんが、2月1日、講談社より、第38回吉川英治文学新人賞の候補作が発表されました。
その中で、ぜひ競馬ファンの人たちにも読んでいただきたい作家がいます。
『ミッドナイト・ジャーナル』でノミネートされた本城雅人氏です。
世紀の大誤報を打って離散した記者たちが、それでも真実を求めて奮闘する社会派エンタメ。
ちょっといつもより仕事を頑張ってみたくなる、不思議な活力に満ちた作品です。
元サンケイスポーツの記者として競馬も取材していたというだけあって、彼は優れた競馬小説をいくつか書いています。
『偽りのウイナーズサークル』(徳間文庫)は馬の誘拐未遂事件と、騎手の変死事件が複雑に絡み合ったミステリー。
意外や意外、大胆なトリックで驚かせてくれます。
あのトリックの大胆さは、岡嶋二人氏以来かもしれません。
読後にカバーの写真を見返してみると、その含意にも気づけるかもしれません。
そして私が最近読んだのは『サイレントステップ』(新潮社)です。
「週刊Gallop」に連載されていた作品のようですので、そこで読んでいた方もいらっしゃるかもしれません。
武豊騎手も帯にコメントを寄せているこの一冊、ラストはグッと涙がこみ上げてくる感動作でした。
レース中の落馬事故で騎手の父を失った息子は、その死の真相を探るべく騎手となる。
しかし物語は予想もつかぬ方向に展開していきます。
厳しい勝負の世界、取材者の苦労、そして名門厩舎のセカンドジョッキーであり続けた父の真情……。
いやはや、個人的には『ミッドナイト・ジャーナル』よりも楽しめた名作でした。